シチリアは2度目だがパレルモは初めてだ。ローマ帝国以前はるか昔からギリシャ支配時代があり,ローマ以降はサラセン人、アラブ人､ノルマン人などの支配を受けるなど複雑な歴史と独特の混合文化を作り出してきたシチリア。特に中世の両ノルマン・シチリア帝国時代は欧州の文明の興隆の影で注目はされていないが、見事な官僚政治を作り上げ、さらに神聖ローマ帝国の皇帝を送り出すなど、実は欧州の中世以降の政治体制に大きな影響を与えた。

近代にいたるプロセスでは、地元の豪族支配とやがてマフィアとなるその手先、貧しさ故の盗賊の存在、ファシストとの連携など混乱した時代をすごしている。周囲の奇岩の山々と農村地帯は山賊の隠れ家でもあった。パレルモ周辺はよきにつけ悪しきにつけその中心地としてれ栄えてきた。依然としてシチリア貴族的な階層は現在も残り、庶民生活とは一線を画した文化をもっていると聞く。

ローマから飛行機で約1時間、パレルモ空港ターミナルビルを出て右に進むと市内行バス停があり、海岸線を走り内陸入ってすぐ。中央駅までは約40分だ。街の印象は想像していたよりも明るい。歩くと人々の冷たい視線を感じるが、声をかけると口数は少ないが親切な応対が返ってくる。人懐っこしさすら感じる。言葉少なく冷たい視線と感じるのは歴史体験からくる自衛の遺伝子がそうさせているのだろうか。

旧市街はほとんで歩いて散策した。宿泊したAmbasciatori Hotel Palermoは駅、バスターミナル、旧市街、スーパーマーケットＧＳにも近く、部屋もきれい出し、フロントの若い人たちも親切で快適であった。

朝食はホテルの屋上でパレルモの屋根と岩山と青い空をみながらいただく。これは気持ちがよく最高だった。筆舌に尽くしがたい快感である。本当にお勧めしたい。これで130ユーロは安い部屋代だ。

クアットロ・カウンティは徒歩で10分程度、ここを拠点に旧市街を回る。バスも使えないこともないが必要ないだろう。難点は道路が狭く混雑していること、観光客が多いことである。団体に出くわさないように早めに移動する。説明は英語、イタリア語、ドイツ語、固有名詞と年代説明が多いガイドはいささか食傷気味になる。それでも我慢して聞いていると基礎知識で探り当てることはできる。

マッシモ劇場は必見、ガイドが1時間に1回案内してくれる。説明はすべてイタリア語だった。客の一人が日本人がいるからもっとゆっくり話してくれと茶化したように説明に口を挟む。ありがたいがゆっくりでも人の名前の多い説明は理解するのが難しい。感動はゴッドファーザーのラストシーンがあったからではない。圧倒的なこの劇場の造りから来る。次の公演の準備をしている空っぽの劇場で感動するのはどういうわけだ?

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